これが最後の工程!化粧係と呼ばれる「金彩」
- e2014/08/26
- a製作工程
こんにちは!京都は暑さがほんの少しましになってはなってきましたが、まだまだ暑いです。よく『京都の夏は本当に暑い』と言われますが、これ本当です。
職人さんのところに仕事を持っていっても皆さん第一声目が「ほんま暑いな!」です。
さて、前回は友禅をご紹介しました。
引き染めで背景に色を付け、友禅で柄に色を塗るので、見た目にはこれでほぼ完成となります。
しかし、友禅だけでは少しボヤっとなりがち。
特に薄い背景色に薄い色の柄が来ると、コントラストが少ないのでとてもボヤっとした印象になります。そういったところを今回ご紹介する金彩でキリッとなるように仕上げます。
金彩とは、金属粉/箔と糊を使って、線を描いたり、粉を散らしたり、箔を貼付けたりする手描き京友禅の一つの技法です。
これで友禅がより引き立ち、豪華に仕上がります。
金彩の技法をご紹介します
金彩と言っても、その中にもたくさんの技があります。
筒描き(金くくり)
まずは金彩の基本、それが筒描きです。
これは柄の輪郭や線を描く時に使われる技法です。今回の柄であればにおいと呼ばれる『しべ』や葉脈を描くときに使っています。
見た目ペンで描く感じで簡単そうなのですが、筒描きに慣れていないと強く握りすぎて筒の中の金糊が出過ぎてしまいます。楽しいですが、意外と難しい。
こういう輪郭を描くことを、手描き京友禅では「くくる」と言います。
これが金糊。糊と金属粉を混ぜたもの。
それを左の青い筒の中に入れます。入れる時は棒に金糊を付けます。このとき水飴を割り箸に付けて回すようになイメージで、垂れないようにしながら入れていきます。
これをしないと、筒の中の側面にべたべたと金糊が付いてしまい、手で握った時にその金糊が出てくることがあるからです。
あまり金糊は入れすぎないように気を付けます。
砂子
底面が網目になった筒の中に、少し細かく切った箔を入れて小さいハケで揉み落としていきます。
このパラパラと細かく落ちた粉が砂子と呼ばれます。接着の糊を生地の上に薄く塗り、その砂子を振り落とすことで生地に砂子が定着します。
入れる筒は竹だったり金属だったりします。
網目の細かい筒。
筒には番号がついています。私たちの職人さんが使っているのは5番から約10〜20置きに200番までの筒を使っています。
番号が小さいほど網目が粗く、大きいほど細かいのが特徴です。
5番はとても網目が粗いので、5ミリほどの大きめの砂子を作る時に使われます。
よく砂子に使われる筒は70、80そしてこの100番。
いろんな形や長さに切って、それを糊に混ぜたり、糊の上に乗せたりして友禅(柄)をより豪華に魅せるのが金彩の役割。
そのため手描き京友禅の中ではよく、金彩は着物をより綺麗にする化粧係と呼ばれています。
金糊と金属粉。
金属粉は、金糊に対して30%-50%の割合で配合します。これは表現しようとする意図によって変わってきます。
金属粉が少ないと光沢が弱くなり、接着力が強まります。逆に、金属粉が多いと光沢は強く出ますが、接着力は弱まります。
押し箔
押し箔とは、柄の一部に箔や砂子を付ける技法。
(写真を撮り忘れてしまいました。申し訳ないです。。)
まずはじめに、加工を施す柄の上に縁蓋(えんぶた)と呼ばれるマスキングテープを貼付けます。
その後、箔や砂子を付けたい(加工したい)部分だけをペン型のカッターで切り取っていきます。
このマスキングテープは厚さが0.06mmとめちゃくちゃ薄いので、あまり力を入れて切ると生地まで切ってしまいます。
経験が浅いと加減が分からないのでコツをつかむまでは、それなりに練習が必要です。
箔や砂子を付けるところが切れたら、その切り取った部分にヘラや筆等で薄く糊をひきます。
マスキングテープに糊が付いても後から剥がすので、カッターで切った箇所以外に糊が付く心配はありません。
そこまでいってようやくこのように箔を張ります。(※マスキングテープを取った後の画像です)
張った後は、糊が付きやすくなるように綿花でトントンと叩いていきます。
少し待つと糊が乾き、箔が完全に生地に張り付きます。
その後、このような小さいハケで必要の無い箔を取っていきます。
糊が付いた所にだけ箔が残ります。
この押し箔の時に使った残りの余った箔(画像左上のようなもの)はもったないのですぐには捨てません。
それらを細かくし、砂子に再利用します。
完成。
まとめ
金彩とは、染め上がった生地に加飾する目的で、金や銀などの箔、または金属粉を接着する加工方法。
見た目をより綺麗にすることはもちろんですが、豪華にしすぎると品が悪く見えるので、そのバランスを見極めるには長年の経験が必要となります。
ここでご紹介したものは、金彩の加工方法の中でも一部です。
金彩と言ってもさまざまな加工方法があるので、その生地の柄/全体の雰囲気を見て「どこにどういうふうな加工をするか」「どのくらいの量の箔/砂子を置くか」「またその形はどうするか」等、常に考える必要があります。
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