こだわりの製作工程
私たちの商品は、全て手描き京友禅の技術を使い【きもの】を作る時と全く同じ工程で作っています。
手描き京友禅とは何か?
歴史
手描き京友禅とは、京都の扇子絵師だった宮崎友禅斎が創りだしたと言われる1678年から続く染色技法です。扇に、おしゃれで遊び心いっぱいの絵を、染料で描くことがとても評判となり、扇だけでなく着物にも「友禅の絵を」と多くの注文がされるようになりました。
大きく分けると13の工程があります。
手描き京友禅は、10以上もの工程を経て、全て手作業で職人により分業で作業をし、作り上げていく方法です。
特に、手描き京友禅は専門性と長年の経験による熟練した技術が要求されます。
このようにして私たちの商品は作られています。
1.下絵
下絵屋さん(デザイナー)に私たちが作りたい商品のイメージ・コンセプトを伝えます。
その後、下絵屋さんがそれらをもとに、下絵(デザイン)を筆で描いていきます。
2.糸目糊置き
シルク100%の生地を1の工程で描いた下絵の上にのせ、デザインの線をなぞるように糸目糊を置いていきます。
糊を置く事で、この後の色挿しの工程で色がにじんだり隣の色が混ざったりするのを防ぐ堤防の役割を果たします。
またこの糊は色を通さないため、最終的に白い線(アウトライン)が残ります。
3.伏せ糊置き
糸目糊置きが終わった後、絵柄を全て糊で伏せていきます。
こうすることでこの後に地の色(絵柄以外の部分)を染めるとき、伏せた部分は染まらず生地そのものの色が残ります。
糊を伏せ終わった後、挽粉(木材を製材する時に出るおが屑)をかけ、乾燥させます。
挽粉は、糊の表面を保護したり、この後の引染や蒸しの工程で、糊が柔らかく戻った場合に起こる、打合い(生地に触れて色が別の箇所に付着すること)を防ぐために付けます。
4.地入れ
次の引き染めの工程で、染料が生地に均等に染まりやすくするためです。
乾燥した【ふのり】をお湯に溶かしたものを生地に引いていきます。
5.引き染め
(絵柄以外の)地の色をハケで染めていきます。
見ているだけだと、とても簡単なように見えます。しかし、ムラなく染め上げるためには長い経験を必要とします。
6.蒸し
引き染めで染めた色を定着させるために、生地を蒸し機に入れます。
蒸しをする事で、発色し蒸しをする前に比べて、より綺麗な色に変化します。
蒸し機の中は100度以上の高温になり、20分〜50分間蒸します。
濃い地色の場合は、色が生地に定着するまで時間がかかるため、蒸し機に2回入れる事もあります。
7.水元(水洗い)
蒸し上がった生地を良質な水の中に通します。
これで生地に付いている余分な染料を落とします。そしてハケを使い、3の伏糊置きの工程で置いた糊を完全に取る役割があります。
こうすることで、地の色(薄紫の部分)は染められたままで、絵柄の部分は白いままになります。
8.友禅(色挿し)
手描き京友禅という文字の中にも含まれている通り、この工程が手描き京友禅のメインパートになります。
小さいハケや筆で、生地の白い部分(糸目糊の内側)に色を挿していきます。
糸目糊が隣り合う色をにじまないように堤防の代わりになりますが、万が一に備えてながら慎重に色を挿す必要があります。
1色をべた塗りすることはよくありますが、ぼかし(グラデーション)も手で挿して表現します。
PhotoshopやIllustratorでは簡単に表現する事ができる【ぼかし】ですが、手で生地に挿すということで用意にミスが出来ません。そのため、熟練した技・経験が必要になります。
9.蒸し・水元-ゴム(糸目糊)落とし
引き染め(5番目の工程)の後でした、蒸し水元をもう一度行います。
ここでの役割も前回と全く同じで、蒸しで友禅(色挿し)の色を定着。そして水元(水洗い)で余分な染料と糸目糊を取ります。
工程2(糸目糊置き)で置いた糸目糊がここでようやく取られます。糸目糊が置いてあった箇所は色がつかないため白い(生地)の色がそのまま残り、アウトラインを描いたかのようになります。
10.金彩加工
友禅(色挿し)だけでも十分な手描き友禅ですが、より華やかにするためにアクセントとして金箔や銀箔、金の粉などをつけます。
手描き京友禅の中で最も華やかな仕事の1つで、分かりやすくお化粧を施すとも言われています。女性と同じで、あまりお化粧をすると【おてもやん】のようになってしまいます。派手になりすぎて友禅の色を駄目にしないために、経験とセンスが必要とされる技術でもあります。
11.補正(地直し)
ここまでのご説明でお分かりかとは思いますが、私たちの手描き京友禅の商品は全て手で作られています。一切機械を使っていないため、多かれ少なかれ色が抜けていたり、色ムラがでたり、色がにじんでしまったり何かしら修正をしないといけない箇所が必ずあります。そういった箇所を修正するのが、補正(地直し)です。
12.ガード(撥水)加工
私たちの商品は、お客様に様々なシチュエーションで使って頂く事を想定しております。例えば、会社、自宅、外出先、車や電車、飛行機の中などなど。天気もさまざまですよね。
せっかくここまでリレーや駅伝のように何十人もの手に渡って形になった商品も、雨が降ってきて濡れたせいで色が落ちてにじんでしまったり、コーヒーやお醤油こぼしてシミになったり、水やお湯がかかって残念なことになったりしてしまっては台無しになります。
こういうことって、気を付けていてもやってしまいます。そういったことを防ぐために私たちの商品の生地(シルクの生地)にはガード(撥水)加工施していますので、簡単にはしみや汚れはつきません。
それでも少し汚れが付いた時には、ガーゼなどを濡らし、固く絞ったあと、軽くトントンと叩いて取る程度で大丈夫です。
※防水ではないため、洗濯機に入れると色落ち・にじみが発生します。水洗いはお控え下さい。
13.裁断・縫製
まずは、小学校や中学校の授業で使ったような、電気のこぎり(こちらは布用)で必要な箇所を裁断していきます。簡単なように見えますが、手前の白い紙(型紙)を切らないようにぎりぎりのところを裁断しています。初めて見たとき、とても素早く裁断していく作業にとても驚きました。
裁断後このようになります。だんだんと形になってきました。
本来であれば、裁断をする時は型を使って、一気に沢山切っていきます。そのほうが効率的ですよね。
しかし、私たちの商品は機械を使わず、全て人間が色を付けたり、形を描いたりしているため同じデザインでも、柄の位置が少しずれることがあります。そのため、型をつかって裁断することができません。
ではどうするかと言いますと、ここでも職人さんの長年の経験によって、その微妙なズレを修正し、出来る限り同じようになるよう一つ一つ手で裁断します。
ここまできてようやく縫製をし形にしていきます。
ようやく完成。
3ヶ月間のバトンリレー
私たちの手描き京友禅の商品は、職人さん達に支えられて作られております。
どんなに早くても、白い丸巻きの生地から商品になるまでに3ヶ月はかかります。完成までリレーのバトンを渡すように、次の工程そしてまたその次の工程へとつながり、何十人もの職人さんの手によって形作られ彩られていきます。そのため、形になったときは私たちも最高な気持ちになります。
機械で大量生産することが出来ないため、一つ一つ微妙に違うという良さと味があります。
手描き京友禅の工程には友禅や金彩など、商品のメインとなるとても華やかなものから、糊置きや地入れのようにとても地味な工程も多くあります。やってることが華やかなもの、地味なもの関係なく、それら全ての工程が無ければ商品は出来上がりません。そのため、手描き京友禅を広げるため、私たちzen hand drawingは、そういったあまり表に出ない工程も今後ご紹介していきます。